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当ブログは株式会社トミーウォーカー様が運営されるPBW,「TW2:シルバーレイン」のPCのサイドストーリーや、不定期日記などを掲載しています。知らない方は回れ右でお願いします。 なお、掲載されるイラストの使用権はプレイヤーに、著作権は作成したイラストマスター様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカー様が所有します。無断使用はお断りさせていただきます。
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運動会の余韻が残るキャンプファイヤーから離れ、やや薄暗い場所。
しかし、それ故に星明りが周囲を優しく照らす空間。
 瞬く星々の下、少年と少女がそれを見上げていた。

「星空…大事な、人たち…思い出すんだ。」

 少しの間が空いて、少年はそう答えた。
ぽつりと少年の口から漏れ出た感想に、少女は「話したくなったら、いつでも聞かせてね」と
言った、それへの少年の返事だった。
 不思議そうに問い返そうとする少女に構わず、少年は言葉を続ける。

「俺が…ここに来る前、まだ…吸血鬼でも、無かった時。もっともっと…小さかった時の事。」

 幼い日の少年、現在は御津乃廉灯という名の少年は、別の名を持っていた。
親を知らず、教育を施されず、物心付き始めた時には、見世物として“仲間”と戦わされていた。
生きる事に必死で生傷も絶えないそんな時期、少年は今の少年と同じ年齢くらいの友だちと一緒に星空を見上げていた。
 友だちは言う。星空は命そのものだと。今まで居なくなった“仲間”たちと、星空の下でなら、会えるのだと。みんなはいなくなったのではなくて、あの美しい光となっている、と。
 幼い少年はただただ、その星空の美しさに魅入られているのみだった。
 ある日、友だちは死んでしまった。もう、いつもの様に一緒に星空を見ることは出来ない。
だが、少年は泣けなかった。“仲間”がいなくなるのは、いつもの事。だから、生き残っている自分が友だちを引き継げばいいのだ。
 その夜、幼い少年はいつもの様に星の見える場所に行く。静かで穏やかな唯一の時間。

「俺は…その時、新しい星…見つけたんだ。あれ。」

 少年は星がまばらに集まる一角を指し示す。一つだけ存在感のある淡い光を出す星がそこにある。

「あれは…きっと、そいつだ。」

 空虚だった時に、自分が触れた感情の一つがそこにあった。

「そう…お友だちと、会えたのね?」

 気遣わしげに少女は言葉を掛ける。だが、悲哀ではない。少年の口調が悲しそうでも、寂しそうでもないからだ。辛い記憶を話させてしまった、その後悔が本当の所だ。
 しかし、それも杞憂に終わる。少女を見て頷く少年は、満面の笑顔。そうさせたのは、古い友人と久しぶりに会ったからなのか、それとも少女・玉城曜子が理解してくれたからなのか。
 その笑顔に、少女の胸に複雑な思いが去来する。少年は今も、人の死に何も感じないのではないか、と。尋ねたくなって、少女は口を開こうとするが、

「もう一つ…ある。かあちゃの…星だ。」

 少年は再び、星空に指を差す。西の外れ、淡くも優しく輝く星を。少年は話を続ける。

「俺の…かあちゃの、記憶…全部、星空…なんだ。」

 今度の口調は、寂しさの色が強い。
 少年は、それでも話をやめない。聞いて欲しいと思うから。

「俺を…吸血鬼に、したのは…かあちゃだ。俺…人間だったけど、半分…吸血鬼だったんだ。」

 それは、月が青白い光を反射していた夜。少年は夜中にぼんやり目を覚ます。窓際に腰掛けて、こっちを見ていた何かが、そのまま月と星が彩る空へと飛び上がる姿がうっすらと目に映る。
 月に向かって行く蝙蝠の翼のシルエットを最後に、少年は再び眠りに落ちた。

「それが…かあちゃとの、最初の記憶。」

 少年は語る。その後、北海道にて母と再会した事、10年以上を経てようやく抱上げてもらった事、少年を探し続けた母の想い、そして……別れの事。

「かあちゃは…俺を守って、死んじゃった。でも…その日に、また…新しい星、見つけた。あれが
 …俺の、かあちゃ。」

 少年の瞳には、涙が溜まっていた。無表情のまま、涙だけを流している。少女はハッとして、少年の涙をハンカチで拭う。

「灯君、無理しなくて、いいのよ?」

 少女の気遣いに、少年は首を振る。涙は止まらない。だが、少年は微笑んでいた。
少女は思う。少年は何も感じていないのではない。一つ一つ、乗り越えてきたのだと。いや、乗り越えつつあるのだと。それでも、全てを背負うには少年は小さくて。特殊な生い立ち故に、自分の心の中は誰とも共有できずに孤独で。

「ようこ…ありがとうな?なんか…楽に、なった。」
「あ…う、うん。どういたしまして…。」

 少年は自分の大事な事を、少女に教えた。他の誰でもなく、少女に。
運動会後のフォークダンスに誘われて、踊りを堪能して、少し静かな場所でこうして星を見上げている。
 これは必然だったのだろうか?そうであるならいいと、少女は思う。

「灯君は、お母様やお友だちと、会えるから、星空が好きなのね。」

 うん!、と少年は笑顔で答える。その笑みは、嬉しさの大きさを表しているかの様だ。
つられて少女も微笑む。今、お互いの間に統一感のある空気が、確かに流れている。
 それは心地よくて、それでいて・・・・・、

「ようこは…なんで、星空…好きなんだ?」
「そう、ね…。私は――――」

 少女は語る。同じ星空に、2つの思い入れ。少年のものに比べれば些細な事かもしれないが、知ってもらえれば、2つの思い入れを共有できると思ったから。
 少年は聞き入る。少し軽くなった心で。まだ迷うことも葛藤も多いけど、今、自分は孤独ではないと分かったから。
 少女はゆっくり、かみ締める様に語る。少年は夜空を見上げながら聞き入る。

 二人を照らす無数の星々は、それぞれの想いを映して優しく光を落としていた。
 運動会お疲れ様でした!

というわけで、灯君の気まぐれによりお誘いしたのを縁にして、SSを書かせていただきました!
ちゃんと許可はいただきましたよ?(笑)

 思うように手が進まない、灯君のSSなのですが、地下闘技場の事、かあちゃの事、どちらもダイジェスト的に詰め込んじゃいました!
 どちらの話も、灯君本人の語りにしない予定なので、実は、両方を灯君が語るってのがミソです。
胸に秘めた、拭えない業と唯一の身内との別れ。その両方に、灯君がどの様にして折り合いを付けようとしているか、それが書けたと思います。

 登場していただいた、玉城曜子(b76893)ちゃんと、その背後さんに多大な感謝を!

それでは、次のSSなり仮プレなりでお会いしましょう。
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