―――――俺…ちょっと、変だな―――――

　それは、胸の底にあるチクチクしたもの。
ふとした瞬間に気付いた、自分の中にあるたくさんの内の一つ。
今までになかったもの、他の人の事でも気付けもしなかったもの、理解できなかったもの。
　それが今、自分の中にある。

　こんな気持ちは知らない。分からない。でも……大切なんだと分かる。

友だちが帰って来なかった時とは違う。かあちゃと分かれた時とも違う。悲しい気持ちじゃない。

みんなと一緒に居る時とも違う。仲間を守れた時とも違う。嬉しい気持ちじゃない。


　なんだろう。

学園祭の時に、何人もいた「仲良し」たち。でも、何か雰囲気が違ってた。
友だち同士とは違う、「仲良し」。みんなは「恋人」とか「カップル」って言ってる。

　でも、友だちと何が違うんだろう?

　嬉しそうで、楽しそうで。
それは変わらないのに、見なくても分かるくらいの気配の差がある。

　学園祭での喫茶店。見て覚えたり教わったりした事をやってみた。
そういう「仲良し」たちは、慌てたり赤くなったり黙り込んだりしてたけど、すごく嬉しそうだった。

　なんで嬉しそうだったんだろう。

　でも、そんなのもいいなとちょっとだけ感じた。
その時の感じは、この頃自分を不安にさせるチクチクしたものと一緒。
いつも自分が感じてる気持ちとは違って、どこか奥の奥から湧き出てくるような。
それは自分にとってよく知ってるものが出てくるところ。
「殺意」と「恐怖」と「吸血衝動」が出てくるところ。
「勇気」と「友情」と「直感」が出てくるところ。
自分の全てを支える、「本能」たちが出てくるところ。

　このチクチクはなんだろう。

　今分かっているのは、「恋人」と言われる人たちを見てる時にチクチクするってだけ。
友だちとは違う、特別を知りたいと思う。分かれば、きっと、このチクチクが何か分かる。

　―――――俺…もっと、みんなと…同じこと、知りたい―――――